V1.0: 全球乱流熱フラックスデータの相互比較結果サマリー
概要
J-OFURO3の乱流熱フラックスデータセットが、前バージョンのデータと比べてどの程度精度が向上したのか、また他に存在する全球プロダクトと比べてどのような位置づけであるかをQuality Checking System (QCS)を用いた現場観測データとの比較結果をプロダクト間で相互比較することで確認した。対象は、J-OFURO3 V1.0を含む5種類の潜熱フラックス(LHF)と顕熱フラックス(SHF)の全球の日平均値プロダクトである。期間は2008年間の1年間とした。QCSにはこの期間に114基の海面係留ブイによる25644日分の現場データが登録されているが、現場データと全てのプロダクトのデータが存在し比較ができるデータ(データ数:17064)のみを使用した。平均場の比較から、5種類のプロダクト間の差は、LHF, SHFともにそれほど大きくはなく、いずれも+-7W/m2以内に収まっていた。その中でも、LHFについてはOAFluxが極端に大きな負のバイアス(-6.5 W/m2)を示し、SHFについてはIFREMERのプロダクトが極端に大きな正のバイアス(5.0 W/m^2)を示した。変動場の比較から、まずLHFについて、J-OFURO3のJ-OFURO2からの精度の顕著な改善が明らかになった。RMS誤差は約10W/m2改善し、26.8W/m2であった。これは他のプロダクトと比較して最も良い精度であった。SHFについては、J-OFURO2からの大きな改善は確認できなかった。これはSHFの推定に関わる気温のデータに変更が無いことが原因であると考えられる。プロダクト間の精度の差はそれほど大きく無く、RMS誤差は5〜9W/m2であった。
はじめに
J-OFURO3 V1.0を含む全球乱流熱フラックスデータの相互比較結果のサマリーです。
前バージョンJ-OFURO2からの精度改善の度合い、また他の衛星や解析データセットの精度に対するJ-OFURO3の相対的な位置づけを確認できます。
対象データセット
2008年の1年間を対象に次の5種類のデータセットを比較しています。
いずれも日平均値の格子データセットとして提供されているものです。
空間格子サイズは、1度格子で提供されるOAFluxを除いて、全てのデータセットで0.25度格子です。
空間格子サイズを統一するなどの前処理は行っていません。
データセット名 | 種類 | 空間格子サイズ | バージョン |
---|---|---|---|
J-OFURO3 | 衛星プロダクト | 0.25度 | V1.0 |
J-OFURO2 | 衛星プロダクト | 0.25度 | HF004 |
GSSTF3 | 衛星プロダクト | 0.25度 | v3 |
IFREMER | 衛星プロダクト | 0.25度 | v3 |
OAFlux | 衛星+再解析 | 1度 | v3 |
結果
Quality Checking System (QCS)を用いた現場ブイデータとの比較結果を複数の全球乱流熱フラックスプロダクト間で比較した結果を示します。
平均場の比較として現場ブイデータとのバイアスの相互比較結果を、また変動場の比較としてTaylor Diagramを用いた相互比較の結果を示します。
平均場の比較: バイアス
バイアスの比較結果を次の棒グラフで示します。
変動場の比較: Taylor Diagram
変動場の相互比較結果はTaylor Diagramで示されます。
Taylor DiagramのX軸とY軸は標準偏差を示し、ブイによる現場観測値の標準偏差の等値線が赤色の点線で示されます。X軸上のx印と赤色の三角形で示される現場観測値の標準偏差を示す点からの同心円状の等値線(黒色の点線)はRMS誤差を示します。また原点から任意の点への角度は、相関係数を示します。
標準偏差とRMS誤差の単位はW/m^2です。
現場観測値と、上記の5種類のプロダクトそれぞれとの比較によって得られた比較統計値から、Taylor Diagramの2次元平面上に5つの丸印がプロットされます。
丸印の色とプロダクトの対応は次の通りです。
赤: J-OFURO3 V1.0
緑: J-OFURO2
青: GSSTF3
黄: IFREMER v3
紫: OAFlux v3